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日本顎関節症リハビリ研究室 /より安定した快適咬合を求めて

日本顎関節症リハビリ研究室 /より安定した快適咬合を求めて

長寿と老化

<長寿と老化>

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日本経済新聞 2003年7月27日より


 「年を取っても自分の歯で食事をしたかった」と悔やんでいる高齢者が大勢いる。入れ歯の噛み合わせが合わないと、どんなにおいしいごちそうでも食事を楽しめない。歯が抜けたためにうまく話せないと悩んでいる高齢者も多い。
一方、自分の歯が残っている高齢者は楽しく食生活を送ることができ、健康的だ。自分の歯を保ち続けることの重要性を思い知らされる。

 1999年度に実施した厚生労働省の調査によると、80歳での平均残存歯数は8.2本。80歳で自分の歯が20本以上残っている人は15%だ。
 高齢者の場合、病気や全身状態、服用している薬剤などの種類によって口の中の状態が変化する。このため、自分の歯を1本でも多く残すには、歯科医をはじめ、内科医、精神科医、臨床看護師らの協力が必要だ。

 東京都老人総合研究所の研究員は、20年にわたって高齢者の口の中の状態を調査してきた。それによると、口の中が健康に保たれている高齢者は、病気になりにくく、社会的活動も高いとの結果が出ている。
 特に痴呆症の介護では適切な口腔ケアが肺炎を予防し高齢者の栄養状態を保つ観点からも重要になっている。研究員によれば、自分の歯をいつまでも健康に維持するためには口の中を傷つけないやわらかいブラシが高齢者には役立つという。
 北欧のフィンランドは歯に対する関心が高い国だ。1970年より国民の歯をすべて残すことを目指している。
 同国では若い世代への対策を重視しているという。将来、年を取ってから起きる歯の問題を少しでも軽くするために、今から国家レベルで予防に取り組もうというもので、注目される。

 日ごろから歯を大切にする努力は欠かせないが、残念ながら歯を失ってしまった場合、再生させることはできないだろうか。
 東京大学医科学研究所の博士は歯胚(はい)細胞と呼ばれる歯の基になる細胞に注目。ブタの下あごの骨から取り出した歯胚からエナメル質と象牙質を備えた歯を再生させる実験に成功した。
 しかし、歯の構造は複雑だ。いろいろな食べ物をきちんと噛めるようなしっかりとした歯を再生するには、克服しなければならない科学的課題が多い。

 将来、再生医療の進歩によって、いったん失った歯をもう一度再生できるようになるかもしれない。だが、その時までは、自分の歯を1本でも多く残して高齢期を迎えることが、食生活を楽しみ高齢期の健康を保つ重要な方法であることは間違いないだろう。



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